相手の住所が不明のとき、少額訴訟の提訴は可能でしょうか?

弁護士 垂水祐喜(大阪弁護士会)
弁護士 垂水祐喜(大阪弁護士会)
2024/07/05

少額訴訟は、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払いを求めるときに利用できる訴訟手続きであり、通常1回で審理を終えるため、簡易で迅速な解決が可能な訴訟手続きです。

ただ、昨今では、SNSなどのやり取りのみでお金を貸してしまい、相手方の住所がわからないということがよく起こっています。そのような場合にでも、少額訴訟の提訴は可能なのでしょうか?

解説していきます。

1 少額訴訟の手続き


そもそも、少額訴訟は、上に書いたように、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えであり、通常、1回裁判所に行けば審理を終えて判決を出してくれるため、通常の訴訟よりも解決の時間が短いという点に特徴があります。

また、少額訴訟では、被告に対し、3年を超えない範囲で分割払いや支払猶予等を命じる判決を出すことができるため、相手方の資力等を考慮して支払える範囲での分割払いを命じてもらうことで、より債権回収の実現を高め、柔軟な解決が可能です。

さらに、少額訴訟には、控訴が認められておらず、異議申し立てしか認められていないため、上級審に移行することなく紛争が解決でき、この点からも通常訴訟より解決の時間が短くて済むというメリットがあります。

2 訴状の送達


少額訴訟も通常の訴訟と同じように、訴状を相手に送達することが必要です。

訴状を相手に届けること自体は裁判所が行ってくれるのですが、訴状をどこに届ければいいのかは、訴訟を提起した原告で示す必要があります。

具体的には、訴状の当事者の欄に、相手の氏名や住所を記載する必要があります。

そのため、訴状を提起する段階で、相手方の氏名や住所をきちんと把握していることが必要です。

弁護士であれば、職権で住民票等を取得することもできますが、SNS等のやり取りだけで全く相手の情報がない場合には、訴訟を提起すること自体が困難になってしまいます。

なお、送達が完了しない場合、訴訟手続きは進行しません。

3 送達ができない場合の対応


では、相手の住所が把握できているけども、相手が訴状を受け取らないときはどうすればいいでしょうか。

① 通常の送達方法

通常は、特別送達という書留郵便で送られることになります。

通常の送達では、郵便配達人が、送り先を訪ね、そこで名宛人に対し、直接手渡すことによって送達が完了します。

② 付郵便送達と公示送達

一方で、相手方が住所に住んでいることは確実だけども訴状を受け取らないとか、そもそも住所地に住んでいるかわからないという場合には、どうすればいいでしょうか?

前者の場合には、付郵便送達という方法が可能です。

この方法を取ると、相手が受け取っても受け取らなくても送達したものとみなして、訴訟手続きを進行させることができます。

また、後者の場合には、公示送達という方法が可能であり、裁判所の掲示板に訴状等の送付物を掲示することによって、送達したとすることができます。

ただ、いずれの方法を取るにしても、現地調査を行い、相手が住所地に住んでいるかどうかを裁判所にきちんと説明する必要があります。

4 新しい回収方法


近年、技術の進展により新しい債権回収の方法が登場しています。特に、オンライン上での紛争解決(ODR: Online Dispute Resolution)が注目されています。

当社の提供しているOneNegotiation(ワンネゴ)は、相手の住所を知らなくても、相手のメールアドレスさえ分かっていれば調停の申立てが可能となっております。

そのため、住所を探す手間や現地調査に手間を省くことができ、より効率的に債権を回収することができるようになります。

少額訴訟を提起したいけれども、相手の住所がわからないという方は、是非一度ワンネゴの利用を検討してみてください。

ワンネゴの提供するODRについては、こちらのコラムをご参照ください。

 →ODR(オンライン紛争解決)って何?! ODRのメリットとデメリットとは?

 ワンネゴの利用はこちらから→One Negotiation(ワンネゴ)

Author Profile

弁護士 垂水祐喜(大阪弁護士会)
上場企業のメーカー法務部の勤務を経て、現在、中之島中央法律事務所にて執務中。使用者側の労働事件・契約法務をはじめとした企業法務をメインの業務とする。