「少額訴訟」という言葉を聞いたことはありますか?裁判所の説明によると、「60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて,原則として1回の審理で紛争解決を図る手続」ということです。
少額訴訟のポイントは、60万円以下の請求ということで金額が少ないこと
、通常長くかかる裁判と比べて手続きが簡素化され審理が1回で終わること
です。
では、あなたが金銭トラブルを抱え、実際に少額訴訟が提起されて、被告になってしまった場合、どのように対応すればいいのでしょうか?本コラムでは、少額訴訟を提起された場合に取るべき対応について解説していきます。
1 少額訴訟と通常の裁判は何が違うの?
通常の裁判では、一般的に訴状が提出された後、複数回の期日が開催され、その期日ごとに双方の主張(言い分)を書面で出し合います。
そのあと、双方の主張が出し尽くされたら当事者や証人を裁判所に呼んできて尋問をして、ようやく、判決となります。
裁判が開かれるのも1,2か月に1回で、その期日を何回も重ねるため、通常の裁判では、一審だけでも、1年、2年という時間はあっという間に経ってしまいます。
これと同じことを少額の請求で行うのは不効率であるということで、少額訴訟という制度ができました。少額訴訟では、簡易裁判所で行われますが、原則として1回の審理で双方の言い分を聞き、証人調べなどの証拠も調べ、その日のうちに直ちに判決を言い渡す
ということになっています。
2 実際訴えられたら?
では、実際に簡易裁判所から少額訴訟に関する訴状が送られてきたら、どうしたらいいのでしょうか。
まず、ほったらかしにしてはいけません。
これは通常の裁判でもいえることですが、訴状を受け取って、期日にもいかず、答弁書も提出しなければ、原告(訴えた方)の言い分に基づいた判決が出される
ことになります。
次に、訴状の内容をきちんと確認して、「少額訴訟手続」か「通常の裁判手続」のどちらがいいか
考えましょう。
原告は、なるべく早く手続きを終わらせたいと考え「少額訴訟」という判決まで1回の審理で終わる手続を選択しています。
これに対して、被告は、通常の裁判手続きで、じっくりと裁判をしてくれと要求する権利があります。
この場合、「少額訴訟への異議」を出せば、通常の裁判手続きに移行します
が、必ず、弁論(裁判)が開かれる日より前に異議を出しておく必要があります。
異議を出せば、改めて、裁判所から通常の裁判手続きに関する連絡が来ます。
通常裁判を選択する基準としては、被告側にたくさんの言い分があったり、関係する証人も多数いたりするなど、時間をかけて丁寧に審理をしてほしい
などといった事情がある場合が考えられます。
3 少額訴訟での審理を選択した場合は?
少額訴訟で対応することにした場合は、事前に、答弁書を提出し、期日に出席できなければ今後どうしたらいいか、裁判所に連絡をして確認しましょう。
期日に出席をして、原告の請求に対してどのように対応したいか、きちんと伝えることが大切です。
通常の裁判では、一括での支払いをしなければならない判決が出る場合であっても、少額訴訟では、分割払いや支払猶予、一部の遅延損害金が免除されるなど、被告に有利な判決がなされる場合もありえます。
またお互い話し合いがまとまれば和解によって事件が終了することもあります。
訴訟の判決に不服がある場合は、2週間以内に異議を申し立てることで、通常の裁判手続きに移行します。
4 最後に
このように、少額訴訟が提起された場合、無視することは得策ではありません。
実際に判決が下されると、財産開示手続きや強制執行手続きに移行し、持っている財産や給与が差し押さえられる可能性があります。
詳しくはこちらのコラムもご参照ください→「無視」戦略は、合理的? ~訴えられたのに無視すると危険~
少額訴訟が提起された場合にには、自身の主張がある部分についてはきちんと自身の主張を述べ、誠実に対応することが肝要です。
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- 2004年 弁護士登録。事件取り扱い分野は、一般民事、相続、離婚など家事事件、債務整理など
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