弁護士が解説!『未収金の回収による経営上の効果』

弁護士 菅野園子(大阪弁護士会)
弁護士 菅野園子(大阪弁護士会)
2024/11/21

未収金が発生した場合、どのように対応されているでしょうか?

回収するのは難しいと諦めてしまって、意外とそのまま放置されている方も多いのではないかと思います。

では、未収金を放置した場合の経営へどのような影響があるのでしょうか?また、回収できた場合、経営上どのようなメリットがあるのでしょうか。

解説していきます。

1 未収金が経営を直撃!その理由とは?


私が、債権回収のご相談を受けたとき、経営者の方から、「売上げが回収できなくても、経費として掛かったものは支払わないといけないし、税金もそのままかかるんですよね。」とお聞きすることがよくあります。

売上げを上げるために、広告宣伝費をかけ、営業し、製品を作ったり、業務を請け負ったりしたにも関わらず、未収金が発生してしまえば、それまでの経費や費やした従業員の労務費等の時間的・経済的ロスが生じてしまいます。

更には、未収金が発生しても、売上げが生じている以上、法人税(法人)、所得税(個人事業者)、事業税(法人・個人事業者)、住民税(法人・個人事業者)といった様々な税金も発生します。

これは、売上げが「債権」であり「相手に一定のお金の支払いを請求できる権利」に由来します。すなわち、支払い期限が来れば、常に金銭を請求できる状態になるため、相手が支払ってこないからといっても、金銭的価値があることに変わりがありません。

いったん計上した売り上げは相手が支払わないからといってなくなるものでもありませんし、直ちに、損金に算入されるわけではありません。

なお、損金に算入されるためには税務上「貸倒損失」に該当しなければなりません。

このように売上げは債権として財産的価値があることから、たとえ、相手から支払がなくても、売上げとしてそのまま税金がかかってしまうのです。

貸倒損失として計上できる場合は、債権の全額が明らかに回収できない場合(事実上の貸倒れ)など、税務上の要件が必要となります。

貸倒損失については、こちらのコラムもご参照ください

未回収債権を放置すると、どうなりますか?会計と法務の両面から教えてください

通常は、売上げに対する支払いがあって、そこから、経費を払って、税金も払おうと考えるのに、売上げに対する支払いがなければ、資金繰りに大きな影響が生じてしまいます。

このように、未収金の発生は経営に大きな影響を与えるのです。

2 未収金を回収すると利益率が上がる理由


未収金を回収するメリットは、一言で言いますと「未収金を回収してこそ現実的な利益が実現される」ことに尽きます。

具体的には、キャッシュフローを改善する効果があります。

単純化して例を挙げます。

例えば、売上2000万円で営業利益率10%の東京都にある会社があるとします。営業利益が200万円です(逆に言うと、営業利益を上げるための費用は1800万円ということになります)。営業外の活動も特別利益や損失もない場合、税引き前の純利益は200万円です。

この会社は、これまで、おおよそ売り上げの5%である100万円の未収金が生じてきて、特に何の対応もしていませんでした。この純利益200万円に対して、かかる税金は、約61万円で、法人税(地方法人税も含む)約33万円、法人事業税約7万円、法人住民税21万円(所得割分のみ)を支払ってきました。※法人税の算定は非常に複雑なものであり、弁護士は法律の専門家であっても税務の専門家ではないため、非常に大雑把な算定で試算であることにご留意ください。

この会社の実際のキャッシュフローですが、入金は1900万円、費用は1800万円、税金が61万円ですから、残るのは39万円しかありません。

2000万円の売り上げがあっても、残るは39万円とすれば、最終実現できる利益の率は、1.95%と2%にも満たないものになります。

一方、この会社に未収金がなければ、入金は2000万円、費用は1800万円、税金が61万円ですから、残るのは139万円になり、最終実現できる利益の率は6.95%と7%弱になります。

しかし、未収金50万円だけでも回収できれば、入金は1950万円、費用は1800万円、税金が61万円ですから、残るのは89万円になり、同様に4.45%と5%弱になります。

ここまで解説してわかるように、未収金を回収できれば、一気に企業の利益率を上げられることが分かります。

3 未収金回収の手段


従来、未収金を回収する手段としては、支払督促や少額訴訟の提起等、様々な手段が活用されてきました。

ただ、いずれも時間がかかったり、費用が掛かったりして、実際の回収において有用な手段とまでは言い難い側面がありました。実際にも、未収金の回収にも経費や時間が掛かるわけですから、単純に未収金を回収するためあらゆる手段をとれとはアドバイスしにくい現状もあります。

そこで、ODRによる未収金回収をおすすめしたいと思います。

ODRは、オンライン上で、調停等の裁判外紛争手続き(ADR)を申し立てることができるもので、昨今新しい手続きとして注目を集めています。

株式会社AtoJの提供しているOneNegotiation(ワンネゴ)というサービスもこのODRの一種です。

ワンネゴは、特に少額の債権の回収に特化したサービスで、申立費用は無料のサービスですので、回収の可能性が不透明な未収金にも使いやすいサービスだと思います。

ぜひ、一度ご利用を検討してみてください。

申立ては、こちらから→service.1nego.jp