「給料払えない」と言われた、そんなときは??

弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
2024/08/01

「雇用主から給料払えないと言われた」というご相談を時々受けることがあります。

給料は生活に直結する重大な問題です。雇用主から給料を払えないと言われたときは、どのように対処すればいいでしょうか?

解説していきます。

1 給料不払いの相談に行く前に


給料を払ってくれないというのは、生活に直結する本当に大変な問題です。

こういった問題は待っていてもなかなか解決しません。そのため、どこかに相談に行く必要がありますが、相談される側としては以下の点をあらかじめ整理をしていただいたら相談もスムーズかなと思います。

まず、確認したいのは、①雇い主はだれか②いつからいつ働いた分の給料なのか③本来の支払日はいつか④支払われない給料の中身は基本給や残業代、賞与などどのようなものなのか⑤本来いくら支払われるべきなのか⑥雇い主は支払わない理由についてどう言っているのか、ということです。

これらのことが確認できたら、対処法が見えてくることが多いです。

あわせて、弁護士などに相談に行くときは、会社のHP、労働契約書や労働条件通知書、給与明細書、給与振り込みがある銀行口座の預金通帳、もし残業代の不払いであればタイムカード等の労働時間を示す資料、ほかにもし可能であれば就業規則や給与規程なども準備できたら、素晴らしいと思います。

2 給料不払いの社会的な意味


労働者に対して給与を払うというのは、取引先に支払いをするということ以上に保護をされています。雇い主が給料を支払い期日までに払わなければ、労働基準法24条に違反し、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。取引先に対する支払いに優先して、従業員への支払いを遅らすということが許されるものではありません。 

3 雇い主の経営状態が苦しい


雇い主の経営状態が非常に悪く、破産手続きを申請するため払えないという事態も起こりえます。

こういった場合には、残念ながら直ちに給料を支払ってもらえるという状況にはありません。

ただ、裁判所で破産手続きが進んでいく中で、仮に会社に財産が残っていれば、取引先や金融機関への支払いに先んじて支払われることもありますし、会社に財産がなくても、破産管財人に未払い賃金の額などを証明してもらい、一定期間の基本給などの8割を労働者健康安全機構に立て替えて払ってもらうことができます。

ただ取り戻すまでに何か月も時間がかかります。

4 支払い能力はあるが、様々な理由をつけて払わない場合


労働者が急に会社を辞めると言い出したことや、仕事で失敗をしたことを理由に、雇い主が損害賠償の代わりとして給料の支払いをしないということがあります(よく、給与から損害を相殺すると雇用主が主張されることがあります。)。

しかし、給料は全額を労働者に支払わなければならず、労働者の同意なく損害賠償や違約金を差し引くことは違法です。

例えば、レジでお金が足りないというときに足りない分をレジ打ちしていた労働者のミスとして給料から差し引くことは明らかに違法です。

5 解決手段


給料の不払いは様々なパターンがあります。それぞれに事案に応じた解決方法がありますので、解決しそうにないときは弁護士や労働組合、労働基準監督署や労働局などに相談をしてみてはいかがでしょうか。

ただ、不払いの金額が少ない場合、費用対効果の観点から訴訟や内相証明郵便を専門家に依頼することが難しい場合があるかもしれません。

経済的な余裕がない場合は、法テラスの民事法律扶助制度により、法律相談や代理援助を得られる場合があります。また、労働審判や訴訟等の法的手続のほか、地方労働委員会による労働争議の調整(あっせん・調停・仲裁)といった手続が考えられます。

労働審判や訴訟等の法的手続は、弁護士への代理がないとハードルが高いかもしれません。

また、最初にオンラインでの紛争解決手続を目指すことも検討してみてもよいでしょう。時間や場所の関係から、法的手続や労働争議の調整へのアクセスが難しい等の場合は、よりオンラインでの紛争解決手続のメリットが生きてくるでしょう。

弊社の提供しているOneNegotiation(ワンネゴ)は、少額債権の支払いに関する調停に特化したODRサービスです。こういったサービスを活用して、給与未払いの問題の解決を目指してみるのはいかがでしょう。

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Author Profile

弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
株式会社AtoJ代表取締役。長年にわたるスタートアップ法務の第一線で活躍した知見を活かし、数多くのスタートアップにリーガルアドバイスを実施。経営経験及び法務経験を活かし、ODR事業を展開中。