裁判で負けたときの支払い期限とは?重要なポイントと対策を解説

弁護士 菅野園子(大阪弁護士会)
弁護士 菅野園子(大阪弁護士会)
2024/06/07

例えば、民事裁判で、Aさんが被告として、相手から100万円請求された場合を考えてみます。Aさんとしては支払う理由がないと争ったのですが、結局、100万円を支払えという敗訴判決が出てしまったとき、一体いつまでにこのお金を払ったらいいのか、払わないとどうなるのか、みていきましょう。

1 そもそも判決とは?


裁判はお互いの主張をぶつけあい、持っている証拠を裁判所に提出していくことで進められます。

そして、裁判所は、証拠調べを行った後、原告の請求が認められるか又は認められないとの心証を得たときは、口頭弁論を終結して判断を下します

これを「判決」といいます。

判決は、法廷で、裁判官が、口頭で裁判の結論である主文を読みあげることで言い渡されます(当事者が出廷していようがいまいが、法廷に聞いている人がいようがいまいが裁判官は法廷で読み上げます。そうでないと、憲法82条の定める公開裁判に反することになるのです!)。

その時、裁判官の手元にあるのが判決書で、これに基づいて判決を読み上げます(場合によっては「判決調書」という簡易的な書類で判決書の代わりなることもあります。)。

この判決書は、最終的に当事者の手元に送付されることになります。

2 判決書はどうやって届くの?


法廷で判決の主文が読み上げられた後、裁判所は判決書(ないし判決調書)という書面を当事者に届けようとします。これは、とても重要な書類で、いつ届いたのか必ずわかるようにしなければいけませんから、「特別送達」という本人ないし家族が受取ったことが確認できるよう郵便局の職員が直接配達をします(不在の時は不在票が入ります)

3 敗訴判決を受けたときの支払期限は…?


それでは、実際にAさんに届いた判決の中身を見てみましょう。

見なければならないのは「主文」のところです。

具体例を挙げたほうがわかりやすいので、表題の例の主文の一例として、

「1 被告は、原告に対して、金100万円及びそれに対する令和4年6月1日から年5分の割合による金員を支払え(①)

2 訴訟費用は被告の負担とする。(②)

3 この判決は仮に執行することができる。(③)」

というのが割とよくあるものではないかと思います。

詳しく説明していきますと、主文の1項「被告は、原告に対して、金100万円及びそれに対する令和4年6月1日から年5分の割合による金員を支払え」というのは、

Aさんは相手に「金100万円」と「それに対する令和4年6月1日から年5分の割合」の「金員(金銭)」を払えと読みます。

つまり、支払うべき金額は「100万円」と、「令和4年6月1日からの年5%の利息」ということです。

今日が令和6年5月31日だとしますと、利息年5%(1年5万円の2年分)をプラスした110万円になり、遅く支払うとその分利息が増えてしまいます。

この利息ですが、利息の率や利息が発生する時期は事件によってまちまちですし、利息が付いていないこともあります。

すなわち、基本的には、敗訴判決が出た場合、速やかに主文1項に記載の金額を支払わないといけなくなります。

次に主文2項の訴訟費用ですが、この「訴訟費用」にそれぞれ払った実際の「弁護士費用」も含まると誤解している方もおられますが、それは含まれません

訴訟費用というのは、原告が裁判所に納める印紙代や郵便切手代等です。この場合相手がAさんに訴訟費用を請求するには、別に裁判所に訴訟費用の確定に関する裁判を起こす必要があるので、この段階では支払いをする必要はありません。

最後の主文は、「仮執行宣言(かりしっこうせんげん)」と言われるものです。

本来であれば、判決が確定(控訴や上告すると確定しない)するまで、Aさんの財産に対する強制執行はできません。

それだとあまりにも時間がかかるため裁判所は一審判決の段階で、強制執行ができるようにAさんが払うべき100万円とその利息について、相手が、仮に強制執行できるようにしておくものです。

一審判決で負けて控訴しても、仮執行宣言がついていれば、相手はAさんの給与や預貯金などの差押ができます。

それを防ぐには、当面相手の強制執行ができなくなるよう裁判所に仮執行宣言の執行停止の申立てをすることが必要です。

4 まとめ


以上、まとめますと、

まず、判決文が届いたら、いつ届いたのか時期を確認し、控訴するのであれば控訴し、主文の内容を確認し、利息も含めた支払い義務がいくらあるか、仮執行宣言がついているかよく確認してください。

仮執行宣言がついている場合は、控訴して判決がまだ確定していなくても強制執行がされる可能性があるので、注意しなければなりません。また、利息が認められている場合は、利息分が増えていきます。

判決が出た以上、控訴せず払うということであれば、支払期限はすでにきていますので、一般的には、判決後速やかに相手あるいは相手の弁護士に連絡をして支払い方法や金額についての確認をした方がよいと考えます。

5 ODRによる解決


このように敗訴判決が出た場合は、速やかに主文に記載された金員を支払う必要があります。

ただ、実際には金策等をするために、すぐに原告に連絡が取れないこともあり、利息や遅延損害金が膨れ上がっていくということもあります。

一方、ODRによれば、利息や遅延損害金の支払を免れることができることもあります

ODRとはオンライン上での紛争解決手続きです。

ODRは基本的に当事者間で交渉を行うことが前提となりますので、場合によっては相手方から利息や遅延損害金のカットを引き出すことも可能なことがあります。

弊社の提供しているOneNegotiation(ワンネゴ)もそんなODRの一種になります。

ワンネゴは、選択肢をタップしていくだけで、簡単・迅速にお金の支払いに関するトラブルを解決することが可能です。また、オンライン調停人を選任して、当事者間の話合いを取り持ってもらうことも可能です。

お金を請求されている方も、訴訟を提起されるまで放置しておくのではなく、一度ワンネゴ上で交渉を行うことを相手方に提案してみると円満な解決が望めるかもしれません。

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Author Profile

弁護士 菅野園子(大阪弁護士会)
2004年 弁護士登録。事件取り扱い分野は、一般民事、相続、離婚など家事事件、債務整理など