少額訴訟とは
少額訴訟とは、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えのことです。
少額訴訟は、一日で審理が終わり、その日のうちに判決がおりることになります。
少額訴訟を行うためには、裁判所に提訴する必要がありますが、どこの裁判所でも申し立てることができるわけではありません。
その事件を管轄している裁判所に提訴する必要があります。
そのため、管轄している裁判所がどこであるのかをきちんと調べておく必要があります。
少額訴訟の管轄
早速、少額訴訟の提訴先について見ていきましょう。
まず、少額訴訟は、被告となる者の住所地を管轄する簡易裁判所に提訴するのが原則です。
ただし、貸したお金を返して欲しいなどといった金銭の支払いを請求する場合には、原告(申し立てる側)の住所地を管轄する簡易裁判所に訴えを起こすことも可能です。
住所地がどこの裁判所の管轄になっているかは、裁判所のHPで調べることができます(例えば、「大阪市」、「管轄裁判所」といった検索ワードで検索してみましょう。)。
きちんと事前に管轄裁判所がどこになるのかを確認しておくことが肝心です。
移送とは
移送とは、裁判が管轄裁判所に係属した場合でも、その裁判所によって他の裁判所に事件が移されることをいいます。
移送には、次の方法があります。
・必要的移送
当事者は、被告が本案について弁論をしたり、弁論準備手続において申述したりする前であれば、管轄裁判所に移送を申し立てることが出来ます。
そして、相手方が移送に同意する時は、それによって著しく訴訟手続きが遅滞してしまう場合を除き、裁判所は移送をしなければならないとされています。
ただし、移送を申し立てるに際しては、理由を明らかにした書面で行わなければなりませんので注意してください。
・遅滞を避ける等のための移送
また、裁判所は、
・当事者及び尋問を受けるべき証人の住所
・使用すべき検証物の所在地
・その他の事情
といった事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避けるため、または当事者間の衡平を図るために必要があるときは、当事者からの申立てを受けるか、または裁判所の判断で、訴訟の全部または一部を他の管轄裁判所に移送することができるとされています。
事前準備
少額訴訟を提起するためには、次のことを確認しておくことが重要と考えられます。
・請求金額
少額訴訟の場合は、請求する金額が60万円以下でなければなりません。60万円を超える場合は、管轄が地方裁判所になり、通常の裁判を行うことになります。
少額訴訟を行う場合には、必ずこの点を確認しましょう。
・訴訟の目的
少額訴訟は、金銭の支払の請求を目的とする場合でなければなりませんので、訴訟が金銭の支払いを求めるものかどうかも確認をしておきましょう。
・被告の住所
原則、少額訴訟は被告の住所地を管轄する簡易裁判所に提訴します。また、訴状は被告に送達される必要がありますので、被告の住所を把握しているかどうかを確認しておくことも重要です。
・証拠の有無
少額訴訟は、審理は原則として1日のみで完了しますので、紛争の内容が複雑な事件や多数の証人の尋問が必要であるなどは、少額訴訟は適さないとされています。
請求の内容が単純で、請求自体に争いがないような場合(例えば、契約書自体は締結されており、その契約内容については債務者が争っていないが、支払がされていない場合)には少額訴訟の方が適しているとされておりますので、自身の紛争がどういった性質のものであるかも確認しておきましょう。
・訴訟回数が年に10回未満であるか?
少額訴訟は、同一の簡易裁判所に、一年で少額訴訟を提訴できる回数は、10回までと定められておりますので、この点も注意が必要です。
ODRの可能性
少額訴訟は、迅速な手続きで通常の訴訟手続きとは違い比較的簡単に提起できる魅力的な制度です。
ただ、上でも述べたように、管轄に注意する必要があるなど、一般の方にはハードルが高いところもあります。
一方で、実は、少額であればある程、話し合いによって回収という解決に至る可能性は高まると言われています。もちろん全額の支払いが受けられるかは分かりませんし、もしかしたら結局支払いが受けられないということだってあるでしょうが、話し合いによる解決を目指す、オンライン紛争解決(ODR)という新しい選択肢が世の中には登場しています。
欧米圏を中心に世界的な広がりを見せているサービスで、仲裁人や調停委員といった話し合いをサポートしてくれるプロフェッショナルが第三者として間に入り、当事者同士で話し合いによる解決を図ることを目指すものです。
ODRについてもう少し詳しく知りたいな、という方はこちらの記事も是非ご覧ください。少額訴訟も一つの手段ですが、法的な手段に出る一歩前に、気軽に使えるオンライン調停という手段があることも、是非皆さん知っておいて下さい。
Author Profile
- 上場企業のメーカー法務部の勤務を経て、現在、中之島中央法律事務所にて執務中。使用者側の労働事件・契約法務をはじめとした企業法務をメインの業務とする。
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