賃借人が家賃を支払ってくれません。どういう手段があるでしょうか。

弁護士 榎本愛(大阪弁護士会)
弁護士 榎本愛(大阪弁護士会)
2023/04/01

マンションやテナントなどを誰かに貸している場合、通常は賃料が毎月発生します。

賃料の支払いが滞りがちな借主(賃借人)がいる場合、悩ましい問題がいろいろあります。

1 賃貸借契約の解除には、信頼関係の破壊が必要


ひと月ふた月賃料が支払われなかっただけで、賃貸借契約を解除することはできません。

賃料の不払いは、もちろん賃借人の債務不履行となるのですが、一度債務不履行(賃料の未払い)があっただけで、すぐに契約を解除することはできないのです。

それは、賃貸借契約が、貸主と借主との信頼関係を前提とした継続的な契約であるため、できるだけその関係を尊重することとしているからです。この考え方によって、賃借人はすぐに家を追い出されたりすることがないよう、保護されています。この点が、売買契約などの1回限りの契約との違いです。

そのため、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたと評価できる状態になって初めて、賃貸借契約を解除することができるのです。

したがって、賃料が支払われなかったというだけで、直ちに賃貸借契約を解除することはできないのです(もし、賃貸借契約にそのような記載があったとしても、その規定は無効になる可能性が高いでしょう)。

3か月~6か月程度、滞納状態が続くと、判例上、信頼関係が破壊されたと評価される可能性がでてきます。

したがって、3か月~6か月程度経てば、賃貸借契約の解除を検討してみてもよいでしょう。

そこで、賃料が支払われなかった場合、賃貸人としては、まず、賃借人に対し支払を催告することになります。

2 一般的な支払催告の方法とは


支払催告の方法に決まりはありませんので、電話や訪問等色々な手段が考えられます。

一般的に、よくある支払催告の方法は、郵便、しかも配達証明付き内容証明郵便です。

この方法をとることによって、督促をしたことと相手方が督促を受け取ったことが証明できるため、いつ支払いを催告したかについて、あとあと争われるリスクがなくなります。

内容証明郵便を送る場合、文案を推敲し、郵便局で特別な方法をとって文書を送付しなければなりませんので、手間がかかります。

そこで、内容証明郵便を送ることについて、弁護士に依頼するケースも少なくありません。

その場合、弁護士費用は通常1通5万円程度~かかります。

そうすると、家賃が5万円に満たない場合にはそれだけで赤字になってしまいますし、5万円を超えていても、実際に受け取れる家賃が大きく減ってしまうことになります。

したがって、ひと月程度の未払いで、弁護士に依頼して内容証明郵便を送付してもらうことは、あまり現実的ではないといえるでしょう。

3 賃貸借契約解除後の流れ


3か月~6か月程度、家賃の滞納が続き、賃貸借契約を解除する際は、どのような流れになるのでしょうか。

まず、賃借人に対し、賃料の支払いを催告すると同時に、契約解除を通知します。

解除通知はどのような方法でもよいですが、こちらも内容証明郵便を使って通知することが多いでしょう。そして、解除にもとづき、明渡しを求めます。

解除通知後、賃借人が任意に引っ越しをしてくれればよいですが、そうではない場合、建物明渡訴訟を裁判所に提起する必要があります。

訴訟で勝訴判決を得、あるいは和解に至ったとしても、相手方が任意に明け渡さない場合には、強制執行により、裁判所の執行官が荷物を運び出すことによって、強制的に明渡しを行うことができます。

そうすると、勝訴判決を得て実際に明渡してもらうまでは、非常に長い時間がかかります(少なくとも、訴訟提起から半年はかかるでしょう)。

4 まず、なぜ支払ってくれないのか事情を知りたい、話が聞きたい、そんなときは?


賃料を支払ってもらなかった場合、通常はさまざまな事情があります。

勤務先の業績が悪化してやむを得ず解雇されてしまい収入がなくなった、事故や病気で一時的に医療費がかかり出費がかさんだ等、いろいろなケースが考えられます。

必ずしも、これからもずっと賃料を支払ってもらえないとか、あるいは賃借人に支払う気が全くないとは言い切れないのです。

賃貸人として、事情を確認したいなと思っても、いきなり弁護士から内容証明郵便が届けば、賃借人はかまえてしまい、賃借人との関係に緊張感が出てきます。また、そもそも賃借人と連絡が取りづらい場合もあるでしょう。

そんなとき、マイルドな連絡方法として、ODRを検討することが考えられます。

ODRとは、オンラインで行うADR(裁判外紛争解決手続)のことです。

ODRであれば、相手の連絡先にURLを送り、オンラインで、第三者を介して話し合いを行うことができます。

法務省から認証を受けた民間ADR機関が行っていれば、第三者が一方に加担したりすることもないため、対等な立場で、自由に話し合いを行うことができ、どうして支払えないのか、どのような方法であれば支払えそうなのかについて、思うところを聞きだすことができます。

事情がわかれば、可能な範囲で支払いを待つことも考えられるでしょう。

同じことは、賃借人に対する連絡だけでなく、賃借人の保証人に対する連絡についてもいえます。

難しい催告書等を自分で書く必要はなく、まずはODRの招待を行うだけ。

賃借人が家賃を滞納している旨を保証人に伝え、支払方法の相談にのるなど、柔軟に対応することができます。

5 賃借人からも、ODRで交渉してみることが可能


ODRの良さは、申立て費用が特にかからない(※機関によります)という点です。

例えばボーナス時まで支払いを待ってほしい、再就職するまで支払いを待ってほしいというような提案があったとしても、通常、賃借人側からこれを申し出るのは簡単なことではないでしょう。

こういう場合にも、賃借人からODRに招待すれば、ODRが法的な紛争解決手続であることもあり、賃貸人が話し合いのテーブルについてくれることが考えられ、双方にとってより良い解決がしやすくなるといえるでしょう。

6 家賃滞納問題の新しい解決方法


賃料の未払いは、従来、内容証明郵便などで支払を催告し、それでも支払われなければ賃貸借契約の解除、明渡訴訟…と、ほとんど決まった流れのように考えられてきた分野ですが、ODRを活用することによって、新しい解決方法を考えることが可能になります。

家賃を支払ってほしい賃貸人にとってはもちろん、家賃を支払う意思のある賃借人にとっても、問題解決の第一歩として、ODRを検討してみてはいかがでしょうか。

株式会社AtoJの運営するODR「One Negotiation」(ワンネゴ)は、法務省から認証を受けたADR機関です。

ワンネゴでは申立手数料はかかりません。賃貸人、賃借人の両方にとって、まず検討しやすい解決手段といえるでしょう。

家賃の滞納にお困りの方で、ワンネゴに興味を持たれた方は、是非こちらのページも見てみて下さい。

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Author Profile

弁護士 榎本愛(大阪弁護士会)
弁護士法人関西法律特許事務所での勤務を経て、弁護士法人新都法律事務所にて執務中。法人・個人を問わず、幅広い分野での交渉・訴訟に対応している。共著「最新 債権管理・回収の手引(新日本法規)」。