データから見る“泣寝入り問題”②家賃トラブル編

弁護士 榎本愛(大阪弁護士会)
弁護士 榎本愛(大阪弁護士会)
2023/09/20

今回は、「データから見る」問題の2つめとして、「家賃」に関するトラブルについて、実際の数字をもとにご紹介していきます。

家賃は生活費の中に占める割合も多く、借主にとっては悩みの種でもあります。

他方、貸主としても、きちんと家賃の支払いがされなければ所有する物件のローンが支払えなかったり、退去を求める必要があるかなどの検討が必要になったりと、難しい問題が出てきます。

そもそも賃貸住宅ってどれくらいあるの?


まずは、全体像をみていきましょう。

2020年3月時点で民間賃貸住宅の数は1529万5000戸となっています(出典:03 平成30年住宅・土地統計調査の集計結果 (mlit.go.jp))。

全借家(1906万5000戸)のうち、約8割が民間の賃貸住宅なのですね。

そして、今居住されている住宅のうち、持ち家は61.2%、民間賃貸住宅は28.5%を占めています。「今居住されている住宅」のことを「住宅ストック」といい、核家族化の進行などにより、住宅ストック数が増えるとともに、それに占める民間賃貸住宅数も漸増しているようです。

(出典:国土交通省「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要」をもとに筆者が作成)

どれくらい滞納されているの?


では、家賃トラブルを端的に示す、「滞納率」をデータでみていきましょう(※入居戸数に対する滞納戸数の割合)。

月末での1か月滞納率、および2か月以上滞納率を、首都圏、関西圏、その他、全国別で表したのが下の表です。(1か月滞納率は30日以降も入金がないもの、2か月以上滞納率は、60日以降でも入金がないものをいいます。)

(出典:2022年11月 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協相互研究所 「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」をもとに筆者が作成。家賃債務保証会社からの代位弁済も滞納戸数に含む。)

これを見ると、1か月滞納率は首都圏関西圏以外の「その他」では2.3%もあることがわかります。

また、「全国」レベルでみても、1か月滞納率は0.9%、2か月以上の滞納率が0.4%もあることがわかりますね。

数字だけ見ると少ない感じもしますが、

すでに見たとおり、全国に賃貸住宅が1529万5000戸あることからすると、ざっくり計算して、全国で約61,180件の住居で、2か月以上の滞納があるということになりますね。

ところで、1か月あたりの家賃の平均は、55,675円となっています(2018年の借家総数でのデータ。出典:平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要 (stat.go.jp))。

ひと月の家賃5.5万円 × 2か月滞納件数61,180件 ×2か月 として計算してみると、

約67億2980万円もの未回収家賃が泣き寝入りになっているといっても過言ではないかもしれません。

家賃の支払いを求めたい、家賃の支払いを待ってもらいたい、そんなときは?


これまで見てきたとおり、決まったとおりに家賃が支払われていないケースは、決して少なくないといえます。

とはいえ、家賃は生活費の中でも大部分を占めるため、家計の状況から影響を受けやすいといえる一方、食費などと違い、簡単に抑えることができるものではないため、その支払いに悩まれる方も多いでしょう。

一方の貸主としても、きちんと決まったとおりに支払われないことが続く場合には、退去を求めるかどうかも含めて検討せざるを得ません。退去などの対処を検討する場合には、弁護士に依頼する必要がある場合も多いでしょう。

・今、短期的に事情があって家賃の支払いが難しい場合

・家賃が高すぎると思っていて、減額を求めたい場合

また、

・先月の家賃の支払いを受けられていないが、まだ弁護士に依頼するほどでもないと考えている場合

・家賃が滞りがちの借主に、事情を聞きたい場合

・退去を求める一歩前の段階として、支払を通告したい場合

などなど、

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ODRについては、こちらのコラムも参照してください

お金のトラブルをオンラインで解決!?新しい紛争解決手段”ODR(オンライン紛争解決)”とは

Author Profile

弁護士 榎本愛(大阪弁護士会)
弁護士法人関西法律特許事務所での勤務を経て、弁護士法人新都法律事務所にて執務中。法人・個人を問わず、幅広い分野での交渉・訴訟に対応している。共著「最新 債権管理・回収の手引(新日本法規)」。