お金のトラブルをオンラインで解決!?新しい紛争解決手段”ODR(オンライン紛争解決)”とは

弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
2022/12/01

皆さん、ODRという言葉はご存じでしょうか?ODRとは、Online Dispute Resolutionの略称で、オンライン上での紛争解決手続のことを言います。

 

ODRとは


日本には、今までもADR(Alternative Dispute Resolution 裁判外紛争解決手続)という裁判に代わる紛争解決手続が提唱され、運用されてきました。

ただ、非常によく利用されているとは言えないのが実態です。今、進化したADRとして、新たにODRが注目を集めています。それはなぜでしょうか。

 

そもそも、ADRとは、(ざっくりと申し上げると)裁判外で紛争を解決する手続き全般のことを指しています。ODRとは、このADRをオンライン上で行おうとするものです。

 

今までも、世の中には、オンライン上の少額な金銭トラブル(例えば、ネット・オークションで送られてきた物が破損していた)や、オンライン上でなくても数万円から数十万円前後の金銭等のトラブル(賃料の未払や貸金が返済されない等)少なくありませんでした。

 

これを裁判で解決しようとすると、時間も費用も掛かってしまうことがネックとなり、結局泣き寝入りするしかないということがありました。

また、これまでのADRも、知名度が低い上、実際に申立てようとしても、書面作成などの面倒があり、あまり利用されていません。

弁護士を始めとする専門家も、少額の金銭トラブルで、法的手続に進むとかえって費用倒れになってしまいかねないような場合には、依頼を受けることに消極的なアドバイスをすることも相応にあるように思います。

 

日本や海外の潮流


一方、海外、特に欧米では、ODRはかなり浸透しており、EUは独自にODRプラットフォームを設置しており、EU加盟国内で生じたトラブルについては国を跨いだトラブルであっても、このプラットフォームを用いて紛争解決できるシステムが既に構築されています。

アメリカでは、民間事業者が離婚向けODRサービスとして「wevorce」というサービスを提供するなど、官民の区別なくODRサービスがどんどん提供されているような状況です。

 

そして、日本でもついに、政府が、ODRなど、IT・AIを活用した裁判外紛争解決手続等の民事紛争解決の利用拡充・機能強化に関する検討を進めることが方針として示され(成長戦略フォローアップ(令和元年6月21日閣議決定:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2019.pdf))、内閣主導で、ODR 活性化検討会により、令和2年3月16日付けで、「ODR 活性化に向けた取りまとめ」がまとめられました(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/odrkasseika/pdf/report.pdf)。

ますます発展していくことが予想されるODRには、今後も要注目です。

ODRのメリットとは? 


このような盛り上がりを見せているODRですが、では一体どのようなメリットがあるのでしょうか?

 訴訟(弁護士あり)訴訟(自分で)これまでのADR機関ODR
簡単さ

 

弁護士が進めてくれるので、それほど面倒ではないものの、弁護士からの質問に答える等は必要

×

 

言葉3が難しいうえに、非常に面倒

×

 

よくわからない手続であり、難しいことが多い

費用×

 

弁護士費用がかかるため、相対的に高額であることが多い(補助があることもある)

 

費用はほとんどかからない

 

費用はほとんどかからない

 

費用はほとんどかからない

解決までのスピード×

 

慎重な審理のため、時間がかかる

×

 

慎重な審理のため、時間がかかる

 

期日が入るまでに1か月近くを要することが多く、それなりに時間がかかることが少なくない

 

全てオンラインで進むため、早い

必ず最終解決するかどうか

 

相手が合意しなくても判決により最終的に解決する

ただ、お金や資産がない相手に対して勝訴判決を得ても、弁済を受けられない

 

相手が合意しなくても判決により最終的に解決する

ただ、お金や資産がない相手に対し得t勝訴判決を得ても、弁済を受けられない

×

 

相手が合意しないと解決しない

×

 

相手が合意しないと解決しない

1 圧倒的に簡単に解決する

裁判所やこれまでのADR機関では、用意されたフォーマットに沿って、紙に文字を埋めていかなければなりませんでした。まず紙を用意するところからして面倒です。

しかも、弁護士等の法律の専門家のサポートなしに、伝えたいことを伝えるだけの文書を書くのは、決して簡単とはいえません。気力と時間、場合によっては弁護士費用が必要なのが、裁判所やADRです。

しかし、ODRでは、パソコンやスマホの画面上で、聞かれたことに答えていくだけで、進められます。圧倒的に簡単に手続が進みます。

2 圧倒的に安く解決する

裁判所やADR機関では、弁護士を使うか、弁護士を使わない場合は自力で指定された日時に決められた場所に出頭しなければなりません。それなりの弁護士費用か自分の時間のいずれかが必要になります。

しかし、ODRでは、弁護士を使わずとも簡単に入力作業が進められるため、ほとんど費用がかかりません。
しかも、自宅など、好きな場所にて行うことができるため、移動時間も移動コストもかかりません。
紛争解決に要するコストが圧倒的に安くすみます。

3 圧倒的に早く解決する

裁判所やADR機関では、申立てから第1回期日が入るまでに1~2カ月かかることは通常です。裁判官のスケジュール調整や相手方への通知に時間がかかるためです。


しかし、ODRでは、最初に裁判官のスケジュール調整は不要であることが多く、相手方への通知もメール等の電子的な方法によるため、時間が大幅に短縮できます。
紛争解決までの時間が圧倒的に短く、早いです。

以上のとおり、ODRは、従来の裁判手続等と比較すると、簡単に、安く、早く、紛争を解決できます。

なお、ODRは、裁判とは異なり、終局的な解決、すなわち双方の合意がない状態で最終的な決断を下すことはできません。終局的な解決を求めるのであれば、権力機構の一部である裁判を利用するほかはありません。

しかしながら、裁判は、全ての紛争の解決に適しているわけではありません。仮に判決が得られても、お金や資産のない相手であれば、弁済を受けることはできません。弁済を受けられないのであれば、訴訟をしてもしなくても、結局変わりがないのです。

自分と相手の双方の合意を目指して、プロフェッショナルや紛争解決システムを介在させることで解決できる紛争は沢山あり、ODRはそのような紛争の解決に最適といえるでしょう。

ODRが普及することは、これまで司法の手が及んでいなかった少額の金銭トラブルに光を当てることにつながると考えられます。

 

(株)AtoJが提供する「One Negotiation(ワンネゴ)」も、金銭トラブルの解決に特化したODRサービスであり、圧倒的に簡単に、安く、早い紛争解決を1件でも実現することで、社会正義の実現に貢献しています。

ますます発展していくことが予想されるODRには、今後も要注目です。

Author Profile

弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
株式会社AtoJ代表取締役。長年にわたるスタートアップ法務の第一線で活躍した知見を活かし、数多くのスタートアップにリーガルアドバイスを実施。経営経験及び法務経験を活かし、ODR事業を展開中。