ODRという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうか。我が国においても注目を集めつつあるODRの最新情報について、ご紹介します。
1 ODRとは~日本と諸外国の趨勢~
ODRとは、オンラインによるADR(裁判外での紛争解決手続き)を意味します。
まず、ADRとは、裁判外の(Alternatice)紛争(Dispute)解決手続き(Resolution)のことであり、裁判所で行う民事調停(場所は裁判所で行いますが、裁判手続ではないので「裁判外」なのです)、裁判所以外の民間の機関で行うあっせん手続などがあります。
ODRとは、つまりこれをオンライン(Online)で行おうというもので、政府も、「すべての人々に司法へのアクセスを提供しよう」と、このODRを推進しています。
令和3年度、法務省にODR推進検討会が設置され、「ODRの推進に関する基本方針~ODRを国民に身近なものとするためのアクション・プラン」が策定されました。
そこでは、今後1~2年以内の短期目標として、
・国民へのODR/ADRの浸透
・ODRへのアクセス・質の向上
・ODR事業への参入支援
などが設定されています。
(参考:https://www.moj.go.jp/housei/adr/housei10_00187.html)
実は、このODRは、海外ではすでにかなり浸透しているものなのです。
欧米では、Eコマース市場の発展に伴い、ODRの普及が進んでおり、裁判によらずに紛争を解決できる手段として広く認知されています。例えばアメリカでは、インターネットオークション企業である「eBay」が年間約6000万件もの越境ECトラブルをオンラインで解決しています。
また、近年アジア諸国でも、中国でアリババが導入を検討するなど、ODRの社会実装に向けた動きが活発化してきています。
そこで、我が国でも諸外国からの遅れを解消し、このODRを積極的に取り入れていこうという取り組みがなされているというわけなのです。
たとえば、ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)にもとづき、法務大臣の認証を受けた民間ADR事業者において、「web会議型」のODRを導入している
ものが少しずつ増えてきています。
ODRが人々に広く認知されるようになり、利用が活発になっていけば、参入する民間事業者も増えてきます。そうすると、今までにない新しい方法でのODR手続が実現する可能性もあり、既存の方法にとらわれない、新しい紛争解決の形がどんどん実現してくことになるでしょう。
2 具体的に何ができるの?
ODRでは、「オンライン」で、裁判によらずに、紛争解決ができます。
例えばあなたが、友人に貸したお金を返してほしいと思っている場合。
直接友人に「返して」と連絡する(催告する)、弁護士に依頼して内容証明郵便を出してもらう、裁判所に訴訟を提起する…などなど色々な方法が考えられますね。
そこで、「ODR」の方法をとると、例えば下記のような流れで解決することができます。
① オンラインでODR機関に申立て ② ODR機関が連絡文書を自動的に作成、相手方に送信 ③ 相手方が応諾するのを待つ ④ チャットツールやweb会議システムによる交渉開始 (中立公正な第三者立会いのもと、話し合い) ⑤ 交渉成立 (お金を返してもらう) |
これらの手続きを完全にオンラインで行うことができるので、あなたが弁護士事務所や裁判所へ行く必要はありません。
スマートフォンやパソコンさえあれば、これを利用することができるのです。
3 ODRでは、何ができないの?
ODRは、裁判ではありません。あくまで当事者同士で話し合いを行い、双方が合意できて初めて、解決に至ることができます。
当事者同士の話し合いで解決できない場合に、裁判官が結論(判決)を出してくれる、ということはありません。したがって、当事者同士の話し合いによって結論が出ない場合には、そこで手続きは終了となります。
もっとも、いきなり裁判を起こすのではなく、まずODRを申し立てることにより、「話し合いによって解決ができるか」を迅速に、かつ簡単に探ることができるため、
まずODRを利用するメリットは大きいといえるでしょう。
4 ODRの何がメリットなの?
先にも触れましたが、ODRのメリットは、なんといってもオンライン上で「簡単に」「早く」「安く」解決できることです。
まず、オンラインなので、どこにいても、スマートフォンひとつで「簡単に」利用することができます。自分で難しい文章を考えたりする必要がありませんし、裁判所に行ったりする必要もありません。新型コロナウイルス等の感染症の拡大の心配も防ぐことができます。
それは相手にとっても同じことなので、相手の都合もつきやすく、結果として「早く」話し合いを始めることができ、解決の途を探ることができるようになるのです。
他方、裁判手続きや従来のADR機関を利用すると、裁判所等の機関のスケジュール調整も加わるため、申立てから、第1回目の期日が入るまでに平均1~2か月かかってしまいます。
さらに、自分で裁判所に訴訟を提起し、裁判手続きを行っていくことは非常に困難です。あるいは、弁護士等の専門家に依頼すると、文書を作成してもらったり、交渉を行ってもらったりするだけでも費用がかかります。
他方、ODRは、幅広い人が手軽に利用できることをモットーとしているため、利用にかかる費用が圧倒的に「安い」ことがほとんどです。
5 まとめ
(株)AtoJが提供している「One Negotiation」(ワンネゴ)も、金銭トラブルの解決に特化したODRサービス
です。
申立ては無料。申立てから解決まですべてオンラインで、スムーズに行うことができます。
金銭トラブルの解決手段のひとつとして、ODRを検討されてみてはいかがでしょうか。
ワンネゴについてもっと知りたいという方はこちら→One Negotiation(ワンネゴ)
Author Profile
- 弁護士法人関西法律特許事務所での勤務を経て、弁護士法人新都法律事務所にて執務中。法人・個人を問わず、幅広い分野での交渉・訴訟に対応している。共著「最新 債権管理・回収の手引(新日本法規)」。
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