医療費の未収金は、病院の経営にとって大きな課題となっています。未収金が発生すると、病院の収益に悪影響を及ぼし、経営の安定性を損なう可能性があります。
本コラムでは、病院において未収金が発生した場合、どのような対応を取ればいいか、解説していきます。
1 年間の医療費の未収金額
日本の病院における年間の医療費未収金額は、相当な額に上ります。
例えば、ある調査(医療施設経営安定化推進事業 医療施設における未収金の実態に関する調査研究 平成31年3月)によれば、調査対象となった病院において、単月で11,410,695(千円)、14,321,065(千円)という規模で未収金が発生していることが判明しました。
各病院における平均未収金額でも、12,850(千円)、16,442(千円)という規模に上っています。この数字は、医療機関が直面する深刻な財政問題を反映しています。
では、未収金が発生した場合に、病院としてはいかなる方法を取ればよいでしょうか?
2 一般的な未収金の回収方法
上の調査によれば、未収金を発生させないために、クレジットカードや自動精算機の導入を進める病院も存在しているようですが、まだ納付書の発行等病院の担当者による自力の回収を試みている病院も多数存在するようです。
ただ、クレジットカードは売上から手数料が控除されたり、自動精算機も導入にコストがかかるなど、デメリットも存在しており、全ての病院がこれらの対策を導入できているわけではないと思います。
(1)内容証明
内容証明郵便は、未収金回収のための有力な手段の一つです。内容証明郵便を送ることで、法的に有効な督促が行われたことを証明でき、また内容証明を送付することで任意に支払いを行ってくる場合もあります。
(2)支払督促
支払督促を裁判所に申し立てて、債務者(ここでいう未収金を発生させている患者)が何も争ってこない場合には、直ちに強制執行を申し立てて、債権を回収することができるようになります。
支払督促の詳細については、次のコラムをご参照ください→支払督促とは?手続き等について解説します
(3)訴訟提起
場合によっては、訴訟提起を行うことも検討し得ます。
一般的には、治療や診察を受けたことに争いが生じることは少ないでしょうし、未収金が高額になる場合も少ないと思われるので、少額訴訟の提起を考えることが多いと思います。
少額訴訟の詳細については、次のコラムをご参照ください→少額訴訟ってなに? 60万円以下のお金のトラブルに限って利用できる裁判制度があるって聞いたけど・・・
3 新しい債権回収の方法
ただ、上の手段のいずれも、申立てに手数料がかかったり、1件1件内容証明や訴状を作成する必要があって、コストも手間もかかってしまいます。
そこで、現在、ODRを利用することによって、未収金を回収する方法が注目を集めています。
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ワンネゴの提供するODRについては、こちらのコラムをご参照ください。
→ODR(オンライン紛争解決)って何?! ODRのメリットとデメリットとは?!
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Author Profile
- 上場企業のメーカー法務部の勤務を経て、現在、中之島中央法律事務所にて執務中。使用者側の労働事件・契約法務をはじめとした企業法務をメインの業務とする。
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