弁護士に債権回収を依頼した場合、まず相手に内容証明郵便を送るケースが多いと思います。
では、内容証明郵便とはいったい何なのでしょう。今更聞きづらい内容証明郵便のいろはをお伝えします。
1 内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰宛てに差し出したかということを、日本郵便株式会社が証明してくれるサービスです。
(出典:https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/)
また、配達証明を付けることで、当該内容を相手が受け取ったことまで証明することができます。
普通の郵便では、送ったものがポストに投函されたかどうか、また相手が受け取ったかどうかまではわからないのに対し、
内容証明郵便を用いると、相手が当該内容の郵便を受け取ったという事実を証明することができるため、裁判の中でも証拠として使われるケースが非常に多いです。
2 内容証明郵便のメリット
・任意の支払いに応じてもらいやすい
内容証明郵便は、相手に確実に受け取ってもらうことになります。通常の郵便物だとポストに投函されたまま、相手が気が付かないこともありえますが、内容証明郵便の場合には、受け取った相手に読んでもらいやすくなります。
また、弁護士名で内容証明郵便を送った場合には、法的措置への移行等が予告されていることも多く、相手にプレッシャーを与えることができます。
より一層、相手が任意の支払いに応じてくれる可能性が高くなるといえるでしょう。
・時効の完成猶予
また、内容証明郵便を送付したことによって、相手に支払いを求めたこと自体が証明できます。
したがって、法律上の「催告」を行ったことになり、その日から6か月間、消滅時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。なお、中断するのは1回のみですので、何回か送っても消滅時効の進行を止め続けることはできません(民法150条2項)。
→債権の時効については、こちら【→債権の時効について教えてください】もご参照ください。
消滅時効の完成がせまっているような場合には、まず内容証明郵便を送り、消滅時効の完成をストップさせたうえで、6か月の期間内に訴訟提起の準備を行うことが良いでしょう。
・相殺や解除、債権譲渡の証明になる
お互いに債権を有している場合、互いの債権を相殺することができます。
例えば200万円の債権をもっていて、相手も自分に100万円の債権(自分にとっては債務)をもっている場合、
こちらが相殺を通知すれば、100万円の支払いを求めることができ、自分の債務は消滅することになります。
相殺自体はどのような方法による通知でも可能ですが、相殺したことを証明することができるので、内容証明郵便によることが多いでしょう。
また、契約の解除も、解除を通知したことを後から争われないために、内容証明郵便によって行うことが一般的です。
さらに、債権譲渡についても内容証明郵便によるべきでしょう。
債権譲渡とは、
AさんがBさんに対してもっている債権を、AさんからCさんに譲渡することをいいます。
これによって、AさんがBさんに100万円を支払ってもらう権利をもっていた場合、これからはCさんが、Bさんに100万円を支払ってもらうよう主張することができます。
この債権譲渡は、Aさん、Bさん、Cさんの間では、どんな方法による通知でも可能ですが、
例えば同じくBさんに対して債権をもっていたDさんに対して、債権譲渡の事実を証明したい場合には、内容証明郵便等、確定日付のある方法によることが必要になってきます(確定日付については、次をご確認ください)。
したがって、内容証明郵便の方法によることが多いのです。
・確定日付を得ることができる
以上みてきたとおり、「内容」について証明してくれるメリットがあるだけでなく、「日付」に着目したメリットもあります。
確定日付とは、私文書がその日に存在したこと(その日までに作成されたこと)を証明できる日付のことです。
たとえば、契約解除について期限が定められているような場合に、
内容証明郵便によって解除を通知した場合には、いつ通知したかが証明されているので、
後になって相手に「期限の日までに解除の通知がされていない!」と主張されてしまうようなことがなくなります。
もし内容証明郵便によらずに、文書に確定日付をつけてもらおうと思った場合には、公証役場に行って公証人に押印してもらうなど、複雑な手続きが必要になってきます。
3 内容証明郵便のデメリット
・確実に履行されるとは限らない
内容証明郵便を送付したからといって、直ちにその内容に法的拘束力が生まれるわけではありません。
内容証明郵便を送付したことによって、相手が任意に支払いに応じてくれればよいですが、受取自体を拒否し、保管期間満了によって差出人のもとに返送されてくるケースもあります。
その場合には、支払督促などを含め、裁判手続きを行う必要が出てきます。
・金額が高い
内容証明郵便には、通常の郵送料に加えて、加算料金等がかかるため、一通送るだけでも費用がかかります(e内容証明の場合、1,540円~)。
また、内容証明郵便を個人の方が作成・送付されるのはハードルが高いと思われますが、弁護士に依頼すると、弁護士費用が別途かかってきてしまいます(通常、3万円~5万円程度の弁護士費用がかかるでしょう)。
4 まとめ
以上みてきたとおり、内容証明郵便の送付には、一定のメリットがあります。
しかし、当事者の方が内容証明郵便の内容を考え、実際に送付することは簡単ではないでしょう。また、弁護士に依頼するにもお金がかかります。
オンライン調停(ODR)を用いると、内容証明郵便で送りたい内容を、簡単に相手に伝えることができます。
ODRとは、欧米圏を中心に世界的な広がりを見せているサービスで、仲裁人や調停委員といった話し合いをサポートしてくれるプロフェッショナルが第三者として間に入り、当事者同士でオンライン上での話し合いによる解決を図ることを目指すものです。
ODRによって時効の完成を猶予させることもできることについては、こちら【→債権の時効について教えてください 】もご参照ください。
お金を支払ってもらいたい場合のファーストステップとして、ODR手続をぜひご検討ください。
Author Profile
- 弁護士法人関西法律特許事務所での勤務を経て、弁護士法人新都法律事務所にて執務中。法人・個人を問わず、幅広い分野での交渉・訴訟に対応している。共著「最新 債権管理・回収の手引(新日本法規)」。
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