お金を貸した相手に対して、少額訴訟を提起しようとしているけども、借用証のようなお金を貸した事実を証明するような証拠がない場合、少額訴訟の提起は可能でしょうか?
解説していきます。
1 少額訴訟とは
少額訴訟とは、60万円以下の金銭請求を対象とした簡易な裁判手続きで、通常の訴訟に比べて迅速に進行し、原則として1回の審理で結審します。
訴訟の費用も比較的安く、一般の方でも利用しやすい制度です。これにより、少額の債権回収を迅速に行うことが可能となります。
少額訴訟については、こちらのコラムもご参照ください
→少額訴訟ってなに? 60万円以下のお金のトラブルに限って利用できる裁判制度があるって聞いたけど・・・
2 証拠がない場合にはどうすれば…?
以前のコラムでも書いているように、少額訴訟は、証拠は即時に取り調べられるものに限定
されているので、1回目の審理までに証拠を提出する必要があり(つまり後から自分に有利な証拠が見つかってもそれを提出する機会がありません)、証拠はすぐに取調べることのできるものに限られています。
そのため、基本的には、少額訴訟は、請求自体に争いがないような場合(例えば、契約書自体は締結されており、その契約内容については債務者が争っていないが、支払がされていない場合)に比較的適している手続きです。
では、証拠がない場合、少額訴訟では、どのように戦えばいいのでしょうか?
(1) 裁判上の自白
「裁判上の自白」とは、相手方が自ら不利な事実を認めた場合、その事実は証拠がなくても認められる
ことを意味します。たとえば、相手方が借金を認めた場合、証拠がなくても貸金の存在を裁判所は認定することができます。
(2)間接事実からの推認
貸金の存在を示す直接的な証拠(借用証等)がない場合であっても、周辺の事実(これを間接事実と呼びます)から貸金の存在を証明できる場合もあります。
例えば、当時、相手方がお金を借りる動機があったこと(事業で失敗していたり、生活費に困っていたなど)や、自分と相手方の関係性(長年の友人関係であったことや、事業を共にしていたなど)、なぜその金額になったのか(事業で失敗して〇万円の返済ができなかったなど)ということなどを証人尋問を行ったりして証明していくことになります。
ただ、現実的には、相手方がお金を借りた覚えはないといって積極的に争ってくる場合には、1回の審理だけで間接事実から貸金の存在を証明することはなかなかに困難です。
そのため、現実的には、通常の訴訟でじっくり争う方が得策であるとも考えられます。
3 ODRの活用
以上、証拠がない場合の少額訴訟の進め方について解説していきましたが、近年、オンライン紛争解決(ODR)というサービスが注目を集めています。
これはオンライン上で、調停等の裁判外紛争手続き(ADR)を申し立てることができるものです。
調停上では、必ずしも証拠の有無は要求されず、話合いによって両者が納得すれば、紛争の解決が可能です。
特に、証拠がない場合でも、相手が納得すれば紛争の解決が可能なため、証拠がなくて、少額訴訟を提起するかどうか悩んでいるという方はODRを申し立ててみることも検討に値する
と考えられます。
当社の提供しているOneNegotiation(ワンネゴ)というサービスもこのODRの一種です。ワンネゴは、特に少額の債権の回収に特化したサービスですので、証拠がなくて少額訴訟の提起をためらっているという方はぜひ一度利用を検討してみてください。
申立ては、こちらから→service.1nego.jp
Author Profile
- 上場企業のメーカー法務部の勤務を経て、現在、中之島中央法律事務所にて執務中。使用者側の労働事件・契約法務をはじめとした企業法務をメインの業務とする。
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