【フリーランス向け】報酬の未払いがあったときの対処法について弁護士が解説

弁護士 垂水祐喜(大阪弁護士会)
弁護士 垂水祐喜(大阪弁護士会)
2024/07/11

弁護士として活動していると、フリーランスや個人事業主への「報酬未払い」に関するご相談をよく受けます。

会社や組織で業務を行っていれば、本人自身がそのような心配をすることはそれほど多くはありませんが、フリーランスや個人事業主の場合、そういった未払いに対して自分自身で対処する必要が生じます。

では、実際に報酬の未払いが発生した場合、どのように対処すればいいでしょうか?

解説していきます。

1 請求根拠の確認


報酬を請求する際には、まず請求根拠を明確にすることが重要です。

契約書に基づく支払期日や報酬条件を再確認し、請求書の発行忘れや期日の勘違いがないようにしましょう。

未払いが勘違いによって発生していることもよくあります。

ただ、報酬の未払いは、相手方の勘違いばかりではないこともよくあります。

よくある未払いの理由としては、「求めているクオリティのものが提供されていない」とか、「●●という業務をしてくれるはずだったのにされていない」といったものです。

こういった場合には、「どういったクオリティのものを提供すると合意していたのか」、「●●という業務を行うことが合意されていたか」というように、業務の質やその内容に関する双方の合意内容が重要になってきます

そのため、メールやSNSでのやり取り、契約書等、客観的に合意内容を明らかにしている証拠がどれだけ残っているかが重要になってきます。

では、証拠からして、相手方の言い分が正しくないことが分かった場合には、どのように対応していけばよいでしょう?

2 フリーランス新法とは…?


令和6年1月にフリーランス・事業者間取引適正化等法という法律が施行され、今までよりフリーランスの方が保護されることになりました。

その中で、

①委託者がフリーランスから業務提供を受けた場合、その日から60日以内の支払期日を設定し、支払いをしなければならない。

②委託者は、フリーランスからの業務提供(1か月以上のもの)に関し、フリーランスの責めに帰すべき事由なく業務の受領を拒んだり、一方的に報酬を減額したり、返品したりしてはならない。

ということが定められました。

そして、これに違反した場合には、公正取引委員会等から、指導や勧告、場合によっては企業名公表されることがあり得ることと定められました。

報酬の未払いがあった場合には、行政に助けを求めることも考えられるかもしれません。

3 未払い報酬の回収方法


ただ、現実的には、まずはご自身による回収を試みるのが一般的だとは思います。

フリーランスが報酬未払いに直面した場合の回収方法にはいくつかの手段があります。

(1)内容証明

内容証明を送付して、報酬の支払いを督促します。

内容証明については、こちらのコラムも参照してください→内容証明郵便とは?

(2)支払督促

支払督促を行う方法もあります。異議申立てがされることも考えられますが、迅速に債務名義を獲得できるので、早く報酬を回収したいと考えられる方にとっては有用な方法です。

支払督促については、こちらのコラムも参照してください→支払督促とは?手続き等について解説します

(3)少額訴訟

未払いの報酬金額が60万円以下であれば、少額訴訟の利用を検討するのもいいかもしれません。

原則、1回の審理で終結しますので、通常の訴訟と比較しても簡便な手続きになっています。

少額訴訟については、こちらのコラムも参照してください→少額訴訟ってなに? 60万円以下のお金のトラブルに限って利用できる裁判制度があるって聞いたけど・・・

4 ODRの利用


とはいえ、自力で法的手続きを進めたり、行政に連絡したりという対応を取ることは、なかなかに難しいと思います。

そこで、ODRという方法をご紹介します。

当社の提供しているOneNegotiation(ワンネゴ)もODRの一種ですが、スマホで入力項目を入れていくだけで調停の申立てが可能です。現在は、申立て無料となっており、費用もかかりません。

フリーランスとして忙しく働く中で、なかなか時間が取れないという方でも簡単に調停を申し立てることができます。報酬の未払いを解消したいけれども、なかなか時間も取れないという方は、是非一度ワンネゴの利用を検討してみてください。

 ワンネゴの利用はこちらから→One Negotiation(ワンネゴ)

Author Profile

弁護士 垂水祐喜(大阪弁護士会)
上場企業のメーカー法務部の勤務を経て、現在、中之島中央法律事務所にて執務中。使用者側の労働事件・契約法務をはじめとした企業法務をメインの業務とする。