今回は、「データから見る」問題の2つめとして、「家賃」に関するトラブルについて、実際の数字をもとにご紹介していきます。
家賃は生活費の中に占める割合も多く、借主にとっては悩みの種でもあります。
他方、貸主としても、きちんと家賃の支払いがされなければ所有する物件のローンが支払えなかったり、退去を求める必要があるかなどの検討が必要になったりと、難しい問題が出てきます。
そもそも賃貸住宅ってどれくらいあるの?
まずは、全体像をみていきましょう。
2020年3月時点で民間賃貸住宅の数は1529万5000戸となっています(出典:平成30年住宅・土地統計調査の集計結果)。
全借家(1906万5000戸)のうち、約8割が民間の賃貸住宅なのですね。
そして、今居住されている住宅のうち、持ち家は61.2%、民間賃貸住宅は28.5%を占めています。「今居住されている住宅」のことを「住宅ストック」といい、核家族化の進行などにより、住宅ストック数が増えるとともに、それに占める民間賃貸住宅数も漸増しているようです。
(出典:国土交通省「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要」をもとに筆者が作成)
どれくらい滞納されているの?
では、家賃トラブルを端的に示す、「滞納率」をデータでみていきましょう(※入居戸数に対する滞納戸数の割合)。
月末での1か月滞納率、および2か月以上滞納率を、首都圏、関西圏、その他、全国別で表したのが下の表です。(1か月滞納率は30日以降も入金がないもの、2か月以上滞納率は、60日以降でも入金がないものをいいます。)
(出典:2022年11月 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協相互研究所 「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」をもとに筆者が作成。家賃債務保証会社からの代位弁済も滞納戸数に含む。)
これを見ると、1か月滞納率は首都圏関西圏以外の「その他」では2.3%もあることがわかります。
また、「全国」レベルでみても、1か月滞納率は0.9%、2か月以上の滞納率が0.4%もあることがわかりますね。
数字だけ見ると少ない感じもしますが、
すでに見たとおり、全国に賃貸住宅が1529万5000戸あることからすると、ざっくり計算して、全国で約61,180件の住居で、2か月以上の滞納がある
ということになりますね。
ところで、1か月あたりの家賃の平均は、55,675円となっています(2018年の借家総数でのデータ。出典:平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要)。
ひと月の家賃5.5万円 × 2か月滞納件数61,180件 ×2か月 として計算してみると、
約67億2980万円もの未回収家賃が泣き寝入りになっている
といっても過言ではないかもしれません。
家賃の支払いを求めたい、家賃の支払いを待ってもらいたい、そんなときは?
これまで見てきたとおり、決まったとおりに家賃が支払われていないケースは、決して少なくないといえます。
とはいえ、家賃は生活費の中でも大部分を占めるため、家計の状況から影響を受けやすいといえる一方、食費などと違い、簡単に抑えることができるものではないため、その支払いに悩まれる方も多いでしょう。
一方の貸主としても、きちんと決まったとおりに支払われないことが続く場合には、退去を求めるかどうかも含めて検討せざるを得ません。退去などの対処を検討する場合には、弁護士に依頼する必要がある場合も多いでしょう。
・今、短期的に事情があって家賃の支払いが難しい場合
・家賃が高すぎると思っていて、減額を求めたい場合
また、
・先月の家賃の支払いを受けられていないが、まだ弁護士に依頼するほどでもないと考えている場合
・家賃が滞りがちの借主に、事情を聞きたい場合
・退去を求める一歩前の段階として、支払を通告したい場合
などなど、
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ODRについては、こちらのコラムも参照してください
お金のトラブルをオンラインで解決!?新しい紛争解決手段”ODR(オンライン紛争解決)”とは
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- 弁護士法人関西法律特許事務所での勤務を経て、弁護士法人新都法律事務所にて執務中。法人・個人を問わず、幅広い分野での交渉・訴訟に対応している。共著「最新 債権管理・回収の手引(新日本法規)」。
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