お金を貸した相手から、返済期日直前になって、
「返す気はあるんだけど、今はお金がなく、すぐに返せそうにない・・・」と言われてしまったことはありませんか?
このような場合に、いくら返してもらうように伝えたとしても、実際に相手にお金がない以上は、どうしようもありません。
しかし、相手にもせっかく返す気があるのだから、これからきっちりと返してもらうために、何らかの合意をしておくべきでしょう。
では、どのように合意すればよいでしょうか。
1 前提:譲歩する=和解する
約束通りに返済期日に返してもらうのではなく、返済期日を伸ばしたり、返済金額を下げたりして、なんらかの譲歩をする場合を「和解」といいます。
では、今回のケースではどのように和解することが考えられるでしょうか。
2 考えられる和解の内容とは?①分割に応じる
和解の内容は基本的には自由ですので、自分が譲歩できる内容にすればよいです。
しかし、和解したとしても、結局守ってもらえなければ意味がないので、相手に「これだったら守れる」と思ってもらえるような内容にすることが重要です。
お金を返してもらいたいときに、よくある和解の内容の一つが、「分割に応じる」ことです。
例えば、50万円を返済期日に一括で返してもらう約束にしていた場合に、相手が「毎月の売上から10万円ずつであれば、確実に返せる」と言っていれば、10万円ずつ、5か月にわたって返してもらうことも検討に値します。
裁判をおこしたりするよりも、こちらがお金をかけることなく返してもらえることになるので、時間がかかっても確実にお金を返してもらいたいという場合におすすめです。
分割に応じる場合には、書面において
“〇回支払いが滞った場合には、残代金を一括して直ちに支払わなければならない”
と定めるべきでしょう。
なぜなら、分割の場合、返済期日が少しずつ到来し、返済期日がまだきていない代金の分までを、相手に支払ってもらうよう請求することはできないからです。
例えば、50万円を貸している場合に、以下のスケジュールで分割払いに応じたとします。
1月10日に10万円
2月10日に10万円
3月10日に10万円
4月10日に10万円
5月10日に10万円
そして、「2回支払いが滞った場合には、残代金を一括して直ちに支払わなければならない」と定めておいたとしましょう。
この場合に、1月10日に10万円が払われたが、2月10日と3月10日にそれぞれ10万円が支払われなかった場合、上記のような定めをおいておけば、3月10日を過ぎると、残りの40万円すべてを今すぐ返してもらうよう請求することができるようになります。
もしこのような定めをおいていない場合には、結局1月10日以外に一度も支払われなかったとしても、5月10日を過ぎるまで待たなければ、40万円すべてについての請求を行うことはできません。
(もちろん、2月10日を過ぎた段階で10万円を、3月10日を過ぎた段階でさらに10万円を、それぞれ請求していくことはできますが、裁判などでこれを行うことは現実的ではないでしょう。)
このような定めを法律上「期限の利益喪失(条項)」といいます。
支払いが滞る場合には、相手の財産状況が悪化していることが考えられます。このような場合に、単に支払いを待つだけでなく、法的手段も含めた次のステップをいち早く検討できるよう、期限の利益喪失条項をおいておくべきだといえます。
この派生として、例えば200万円の債権をもっている場合に、190万円まで分割できちんと払ってくれれば、残りの10万円は免除する、といった定めをおくことも考えられます。
このような定めによって、190万円までの返済がより確実になることが期待できます。
3 考えられる和解の内容とは?②返済期日の延長に応じる
そのほかにも、
「今すぐには難しいが、来月になると大きい売上金が入ってくるので、それまで待ってほしい」と言われれば、返済期日の延長に応じることも考えられます。
返済期日の延長に応じる場合には、「来月まで待つから、今日からその日まで利息を付けて返してね」というように、改めて利息をつけることや、利息の割合を変更することもできます。
その場合には、その旨を書面に書いておくべきでしょう。
また、利息制限法等の規制もありますので、注意が必要です。
4 和解をスムーズに進めるために
実際には、当事者の方同士で和解を行うのはとてもハードルが高いです。
和解を行う前提として、どうして支払いが難しいのかを聞きだしたり、現在の財産状況を確認したりすることが必要になってきます。
そのうえで、どのような方法であれば払ってもらえるかという交渉をし、守ってもらいやすい和解内容を作成しなければなりませんが、そのようなことを当事者同士で行うのは簡単ではないでしょう。
せっかく和解できるのであれば、お互いが納得して、守りやすい和解内容にすべきです。
オンライン調停(ODR)では、当事者以外の第三者を介して話し合いをし、バランスをとりながらお互いにとってより良い和解案を模索していくことができます。
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Author Profile
- 弁護士法人関西法律特許事務所での勤務を経て、弁護士法人新都法律事務所にて執務中。法人・個人を問わず、幅広い分野での交渉・訴訟に対応している。共著「最新 債権管理・回収の手引(新日本法規)」。
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