1 送達とは
裁判所に訴状を提出して訴訟を提起した後、実際に訴訟が開始するためには、被告に訴状が「送達」される必要があります(民事訴訟法98条以下)。
通常、被告の住所等(民事訴訟法103条1項)を宛先として郵便配達人が特別送達という方法で郵便を届けてくれます。特別送達の手続においては、郵便を受け取ったことについて署名若しくは押印が求められます。
特別送達は受け取りが拒否できないものとされています。また、同居の親族等が受け取った場合にも送達自体は行われたものとして手続きが進みます。
2 訴状を受け取らない場合は?
しかし、強情に訴状を受け取らず、郵便配達人の署名や押印の要請にも断る者がいます。
訴訟を提起した側にとっては、相手が訴状を受け取るか否かに関わらず、訴訟が進めば良いのですから、「送達」したと裁判所認めてくれる状況があればよいことになります。
「送達」が完了していない以上は、裁判所は訴訟手続を進めてくれませんので、他の方法で送達をしてもらうように裁判所に依頼する必要があります。
民事訴訟法上、送達方法にはいくつか種類がありますが、相手方が訴状を受け取らない場合には、居住しているけれども受け取らないか、そもそもどこに住んでいるのか分からないという2つのケースが考えられるでしょう。
まず、相手方が訴状を受け取らないだけで、相手方が送達場所に居住していることが確実であれば、相手方が訴状を受け取らなくても訴状を送達場所に届けてもらうこと「送達」がされたと裁判所が認めてくれる制度があります。これを付郵便送達(民事訴訟法107条)と言います。
この場合には、相手方がその場所に住んでいることを明らかにしたうえで、裁判所に付郵便送達をしてもらいます。実際には、相手方の居所の調査報告書を添付した上申書を裁判所に提出します。
一方、相手方が実際にどこにいるのかが分からない場合があります。
この場合には、裁判所に訴状を受け取るべきことを告示した書面を掲示することで「送達」したものと扱ってくれます。この制度を公示送達(民事訴訟法110条)といいます。
公示送達を行うには、住民票などの調査のほか、相手方の所在地を調査したけれども分からないことを調査し、裁判所に上申書を提出する必要があります。
付郵便送達や公示送達によって、「送達」がされた状態になれば、訴訟は進んでいきます。
この後、訴訟の結果である判決によって、判決に示された一定の命令に法的拘束力が発生します。この判決を実現するには強制執行を行うことが必要です。
相手方の居所が不明な場合などには、強制執行を見据えた訴訟提起が必要になりますので、本記事をご覧の方でこのようなケースを抱えておられる方は弁護士にご相談することをお勧めします。
3 ODRの利用
相手方が訴状を受領しないことが想定される場合には、弊社のサービス「ワンネゴ」を使ってみることを検討されてみてはいかがでしょうか。
「ワンネゴ」では、メールやLINEメッセージでODRの申立てがあったことが通知されますので、手続きを進めるために相手方の住所を調査したりする手間はありません。
もちろん相手方が手続きに応じるかどうかは分かりませんし、もしかしたら結局支払いが受けられないということだってあるでしょうが、話し合いによる解決を目指す、オンライン調停(ODR)という新しい選択肢が世の中には登場していることを知っておいて頂ければと思います。
ODRは、欧米圏を中心に世界的な広がりを見せているサービスで、仲裁人や調停委員といった話し合いをサポートしてくれるプロフェッショナルが第三者として間に入り、当事者同士で話し合いによる解決を図ることを目指すものです。
ODRについてもう少し詳しく知りたいな、という方はこちらの記事も是非ご覧ください。法的な手段に出る一歩前に、気軽に使えるオンライン調停という手段があることも、是非皆さん知っておいて下さい。
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- 蒼生法律事務所にて現在執務中。債権回収・不動産法務・契約法務等をメインの業務とする。
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