裁判を一人ですることはできるのでしょうか?

弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
2022/12/09

1 「裁判」は大変?!


会社でも個人でも、裁判をするとなれば、大事です。「裁判」は、できれば、したくないものであることは間違いありません。

しかし、社会生活を営んでいる中で、誰かの行動や言い分に納得できない場合は、裁判という公の場で判断してもらうしかありません。

裁判は、大変です。裁判の大変さを回避する方法は、大きく分けて3つあります。

2 弁護士に頼って裁判を進める


1つ目は、誰かに頼る方法です。ほとんどの場合は、弁護士に頼ることになります。弁護士は、訴訟等の裁判において当事者の代理人をするプロです。

よほど、裁判に精通している人でない限り、プロに頼んだ方が有利に、そして円滑に進みます。プロの弁護士であれば、適切なアドバイスももらえることでしょう。

しかし、残念ながら、弁護士に頼る方法は、基本的にお金がかかります。また、自分と相性が合うか、自分にかかった事件の専門家であるかといった点で、不安な場合もあるかもしれません。

どうしてもお金が用意できない場合は、訴訟救助や法テラスといった方法もありますが、使える場合は限定されており、基本的には、ある程度の弁護士費用などの資金が必要になります。

3 自分自身で裁判を進める


お金をかけずに裁判を進める方法は、自分自身で進めることです。

日本では、民事裁判を進める場合は、弁護士等を訴訟代理人とするほかに、訴訟代理人をつけずに裁判を遂行することができます。

しかし、お金がかからない代わりに、裁判に関する全ての作業を自分自身で行わなければならず、大変であることがほとんどです。弁護士をつけない当事者が進行する訴訟を「本人訴訟」と言われることがあります。

実際には、離婚調停や遺産分割調停などの調停事件(正確には訴訟ではありません)や訴訟の一部では、弁護士をつけずに行われていることがあります。

ただ、極まれに、異様に裁判手続きに精通している人がいますが、ほとんどの場合、弁護士が行う進行と比較すると、全く違うレベルの主張や訴訟進行になってしまい、その結果、不利な結果を甘んじて受け入れなければならないケースもよくみられます。

弁護士であれば、思い至る主張や証拠収集方法に至らず、敗訴してしまったり、適切な和解のタイミングで和解ができずに敗訴することになりかねません。

そこで、自分自身で進めるものの、裁判より簡易な解決を提案します

4 裁判以外の方法で解決する


例えば、裁判以外の紛争解決方法であれば、自分自身で進めても、弁護士等の紛争解決のプロが間に入って解決に協力してもらいつつ、弁護士を頼むより安価に解決できるケースがあります。

弁護士会等が提供しているADRと呼ばれる手続のほか、最近では、オンラインで進められる紛争解決手続もあります。このオンラインでの紛争解決手続は、ODRと呼ばれています。

このODRは、裁判と比べると、かなり簡単に手続を進めることができます。手元のスマホやパソコンで、指示に従って入力するだけで、進んでいきます。

唯一の欠点は、相手も同じ方法で解決しよう、最終解決の内容に同意しようとなってくれなければ、解決できないことです。

確かに、相手が解決しよう同意しようとなるかは、やってみないとわかりません。

しかし、ODRの場合、もし相手が「同じ方法で解決したくない」とか、「和解できない」となったとしても、デメリットはありません。

強いて言えば、ODRに入力した時間くらいです。

5 裁判の前にODRをする時代


裁判は、どうしても大変な面があります。お金がかかるかもしれず、自分でやるにしても、大変であり、且つ、うまく進められないというリスク・デメリットがあります。それはある程度やむを得ない部分として割り切るしかありません。

ただ、大変な思いや費用をかけて裁判をするという前に、ODRやADRを考えてみてはどうでしょうか。

近年、ODRは非常に進化を遂げて、実際の解決に役立つケースは少なくありません。

そうなれば、裁判に踏み出す前に、ODRを利用しない手はありません。

ODRをやってみて、ODRで解決ができなければ裁判、という時代になりつつあります。

ODR機関やADR機関は裁判所ではないので、最終的に解決するとは限りませんが、ODRの場合は、トライするコストが非常に低いかゼロであることがほとんどで(※)、解決できなかったとしてもデメリットはほとんどありません。裁判を検討している方は、是非、一度、ODRにトライしてみてください!

※  無事に紛争に解決した時に費用が発生することがほとんどです。 

Author Profile

弁護士 森理俊(大阪弁護士会)
株式会社AtoJ代表取締役。長年にわたるスタートアップ法務の第一線で活躍した知見を活かし、数多くのスタートアップにリーガルアドバイスを実施。経営経験及び法務経験を活かし、ODR事業を展開中。